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猫ではない、低い声が呟いた。
「おのおの方、今の雨雲のこの状態では、心許ないであろう」
トラがさっき登っていたブロック塀の内側は、誰かの家の庭なのだが、そのブロック塀からヤツデの木が覗いていて、その葉っぱの上に大きめのアマガエルが乗っていた。
「こんなところで出会ったのも何かの縁…。あの雨雲をこちらに呼んで、夕立を降らせよう」
これに鳩と猫が同時に驚きの声をあげた。
「おお、それはありがたいが…」
「雨雲を呼び寄せられるのか」
アマガエルはニヤリと笑った。
「カエルの力を甘く見ないでいただきたい」
「しかし、力の弱そうな雨雲であるが…」
「弱いのではなく、ひどく気まぐれで、やる気がないだ。歌ってやれば喜んでやって来て、調子に乗って雨粒を降らせるだろう」
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