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 その時だ。トラが今度は黒とブチの二匹に追われて、私達の前に転がり出た。  さっきの三匹のうちのサバ虎の猫が、黒とブチに加勢して、トラを前足で地面に押さえつけた。  ギャアオウ、アアオウと、トラは威嚇の声をあげて抵抗するが、サバ虎の前足はがっちりとトラを押さえて離さない。 「トラ、言うことを聞いて。夕立に当たれば、しっぽが元通りになるんだって。だから…」  シャアアア!  トラが私に向かって憤怒の形相を向けた。サバ虎にがっちりと押さえ込まれていなければ、私はトラに噛まれていただろう。 「こやつに何か言っても無駄です」  サバ虎がため息とともに言った。 「こんなにまであなたを恨むのは、前世の因縁が原因らしいのですが…」  キジ虎が、トラの顔を見ながら言う。 「恨んでもせんのないことだと、こやつも分かっているのです」  トラは狂ったようにギャウウギャウウと吠えまくっている。  茶虎が、まるでお坊さんのような悟りきった顔で言った。 「いい加減に静まれ。恨み悲しんでも、死んでいった者達の供養にはならぬ。このままだと、おぬしは化け猫になるやもしれんぞ」
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