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 夕立に、猫もカエルも、鳩も私もぐっしょり濡れた。  さっき集まっていた猫たちは、茶虎とキジ虎とサバ虎の三匹を除いて、ほとんど姿を消していた。雨に濡れるのが嫌だったのかもしれない。  トラがむくりと起き上がった。その体もびしょびしょに濡れている。  そしてトラは音もなく走り去ったのだが、その後ろ姿を見て、私ははっとした。しっぽが元通りになっていたのだ。 「帰るか」  鳩が私に穏やかな声をかけてきた。  サバ虎と茶虎とキジ虎の三匹も、無言で立ち去ろうとしていた。カエルの鳴き声もいつの間にか聞こえなくなっていた。 「皆さま方、大変お世話になった」  鳩が猫とカエルにお礼を言ったので、私も慌ててそれに習った。 「あ、ありがとうございました。このご恩は一生忘れません」  確かに一生忘れないだろう。  三匹は行ってしまった。カエルはいついなくなったのか分からない。夕立ももう止んでいた。
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