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それにしても、私は猫のしっぽを引きちぎるほど、ひどい踏みかたをしてしまったのだろうか。それとも、猫のしっぽというものは、踏んだだけで取れてしまうものなのだろうか。
いいや、そんなはずはない。「間違って猫のしっぽを踏んだら、取れてしまいました」なんて話は、ついぞ聞いたことがない。
残されたトラの尾からは、血は出ていなかった。
芝生の上にのっぺりと横たわった太いヒモのようなそれは、フェイクファーで作った、ぬいぐるみのしっぽの部品のようにも見える。
しかし、それは微かではあるが、確実にぴくぴくと動いていた。
やはりこれは本物の猫のしっぽなのだ。ついさっきまで、トラが体の一部として、立てたり振り回したりしていたものだ。
「なんと憐れな…」
声をするほうを見ると、庭木の枝に鳩がとまっていた。
「わざと踏んだんじゃないんだけど…」
「そなたを責めているのではない。あの猫は、自分で尾を切ったのじゃ」
「自分で尾を切った?」
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