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「では、共に夕立を迎えに行くぞ。そのちぎれた尾を持ってついて来い」
そう言って、鳩は音もなく、ふわりと宙に舞い上がった。
「猫は…、一緒に連れて行きたいのはやまやまだが、近くにはいないようだ。しかし、あの猫なら自分から夕立のもとに来るやもしれぬ。そうであれば首尾は上々。そうでなければ…、いや、尾だけであっても、何がしかの救いにはなるはずだ」
「???」
「急げ。あの雨雲を追いかけるのだ!」
そして、一気に空の高いところまで上昇した。
「ちょっと待って!」
鳩は、上空を旋回しているようだ。
私は恐る恐るトラのしっぽを拾い上げた。ほんのりとした温かさが手のひらに伝わってくる。
しかし、私が手に取った瞬間、地面の上ではぴくぴくとしか動いていなかったしっぽが、大きくブンブンと暴れ出した。
トラのしっぽは、トラ本体と同じく、私のことが嫌いらしい。
私はムッとしながらも、しっぽを掴んで空を見上げた。鳩の姿が西のほうの空に見える。
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