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 鳩を見失ってはいけないと走り出したが、こちらは空でなく、地上を行かなければならない。  しかも、住宅街の入り組んだ道路である。  本当にこのまま鳩を追って行けるのだろうかと思っていたら、鳩のほうがひゅーっと下まで降りてきた。 「このまま南西に向かうぞ」  鳩は私の頭の右斜め上1メートルの位置で、私に指令を出した。 「見えるか。あの雲だ」  家々の間から、その方向の空に灰色の雲が立ち込めているのが見えた。雲と雲の間が時々ぱっと光るのは、さっきから微かにゴロゴロとなっている雷だろう。 「あの雲の下まで行くの?もしかして、もの凄く遠いんじゃ…」  鳩はちらりと私を横目で見た。 「やめたいか?」 「やめたいとかじゃなく、あんなところまで走れないっていう意味なんだけど…」 「走れるさ。わしと一緒ならな」  一瞬、鳩がニヤリと笑った気がした。そして両方の翼を広げて、すーっと上昇してしまった。  私は必死で地上を走って追いかけた。右手には、ジタバタと暴れるトラの太いしっぽを持っている。
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