11人が本棚に入れています
本棚に追加
いつの間にか、スーパーや銀行のある通りに出ていた。人も車も多い通りなのだが、全力疾走している私のことを誰も見ない。
私は息も切れていなかった。人も車も、面白いように追い越せる。風になったような気分だ。右手のトラのしっぽは、相変わらずジタバタとうるさいけれど。
なるほど、あの鳩と一緒なら、あの雨雲のところまで走って行けるかもしれない。
鳩が焦るように言った。
「雨雲はもうすぐそこだ。だが、雨は…弱い。いつ止んでしまってもおかしくない。もっと急がねば、夕立にあえぬかもしれぬ…」
私は尋ねた。
「夕立にあうことが重要なの?」
「あの猫を救うためには、夕立の雨に当てなければいけない。夕立は、自分と同じ縦ジマのものを癒すのじゃ」
「夕立が縦ジマのものを癒す?!」
トラはキジ虎だ。虎猫のシマ模様は縦ジマなのだろうかと思って質問すると、鳩は神妙な顔で「いかにも」と答えた。
「近年、夕立はめっきり減った。それが今日のこの日に訪れたのじゃ。なんとしてでも、その尾だけでも夕立を浴びせてやらねば」
最初のコメントを投稿しよう!