3.

2/2
前へ
/20ページ
次へ
 いつの間にか、スーパーや銀行のある通りに出ていた。人も車も多い通りなのだが、全力疾走している私のことを誰も見ない。  私は息も切れていなかった。人も車も、面白いように追い越せる。風になったような気分だ。右手のトラのしっぽは、相変わらずジタバタとうるさいけれど。  なるほど、あの鳩と一緒なら、あの雨雲のところまで走って行けるかもしれない。  鳩が焦るように言った。 「雨雲はもうすぐそこだ。だが、雨は…弱い。いつ止んでしまってもおかしくない。もっと急がねば、夕立にあえぬかもしれぬ…」  私は尋ねた。 「夕立にあうことが重要なの?」 「あの猫を救うためには、夕立の雨に当てなければいけない。夕立は、自分と同じ縦ジマのものを癒すのじゃ」 「夕立が縦ジマのものを癒す?!」  トラはキジ虎だ。虎猫のシマ模様は縦ジマなのだろうかと思って質問すると、鳩は神妙な顔で「いかにも」と答えた。 「近年、夕立はめっきり減った。それが今日のこの日に訪れたのじゃ。なんとしてでも、その尾だけでも夕立を浴びせてやらねば」
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加