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 私の目の前を、ミツバチが素早く横切っていった。ミツバチの黒と黄色のシマも、縦ジマのうちに入るのだろうか。  それだけではなかった。大きなトンボが飛んでいる。黒と黄色のストライプ模様の、あの大きな体はオニヤンマだ。  オニヤンマも最近は本当に珍しくなった。この辺りは自然がまだ残っているとはいえ、街の中をオニヤンマが飛んでいるなんて。  向こうのほうから、犬の泣き声が聞こえてきた。 「こらっ。どうしたの?もうすっかりおばあちゃんになっちゃったから、最近はうんと大人しかったのに」  飼い主の女性は、閉じた傘を持っていた。  レインコートを着せて散歩に連れ出した自分の飼い犬に、静かにするように注意するのだが、犬はそんなことはお構いなしにワオンワオンと尾を振りながら飛び回っている。 「雨が降ったのが嬉しかったの?そんなにはしゃぐと、疲れておうちまで歩けなくなるよ」  見ると、犬は虎柄の甲斐犬だった。甲斐犬のあの模様も、夕立に縦ジマとみなされたらしい。
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