王子様がお迎えに上がりました

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「樹菜、王子様のお迎えが来たよ〜」 放課後になると友達がそう言ってからかってくる。 「笹仲さん帰ろう」 入原君にそう言われると胸がきゅーってなる。 「はい」 私たちは恋人同士ではない。 文化祭の前日の話だ。廊下を走っていた入原くんが私の作っていた出し物にぶつかって作品が壊れてしまったという出来事があった。 誰もが通る廊下で作っていた私たちが悪いし、入原君が一方的に悪いわけではないけれど、文化祭前日だったのもあって申し訳ないと言ってくれた。 入原君はその日、急用が出来て走っていたみたいで、出し物の直しが一緒に出来ない代わりに後日私のお願いを聞いてくれると言ってくれた。 「入原君本当に何でも良いの?」 「うん。俺に出来る事なら。」 私は入原くんに私の一番の願いを叶えてもらう事にした。 「樹菜、入原君と付き合ってるの?」 「えっ、入原くんと付き合ったの?樹菜やったじゃん!!」 入原くんが初めて迎えに来てくれた日は友達からの質問攻撃がすごかった。 「付き合ってる訳ではないんだけど…。」 「どうかな〜?でも良かったね!樹菜、入原くんずっと好きだったもんね」 「そうそう、樹菜の心の王子様。文化祭の件、逆にラッキーだったね!」 そう、私は入原君がずっと好きだった。 だから友達の言うとおり文化祭の件は内心ラッキーって思ってしまった部分があった。 いや、全面的にラッキーでした。 入原君と一緒に帰る事が出来るなんて。 「えっ?願い事“一緒に帰る”で良いの?」 「…うん。あの毎日じゃなくて良いんだ。入原くんの都合の良い日で」 了解、と笑顔で言ってくれたその日から、入原君は放課後迎えに来てくれるようになった。 今日も入原くんと一緒に下校出来る。文化祭前の私から考えたらすごい進歩だ。 帰り道、夕日に照れされているキレイな橋の下の川よりも入原くんをいつも見てしまう。 「…俺さ実はあの文化祭の件、笹仲さんにはめちゃくちゃ申し訳ないんだけどちょっとラッキーって思ってるんだ」 「えっ…?」 突然入原君があの時の話をしたので私は驚いた。 「笹仲さんの事ずっと気になってたんだ。だから一緒に帰れる事になってラッキーだった。」 「ええっ?入原くんっ!!」 まさか入原くんも同じ気持ちだったなんて。そんな嬉しい事って…。 「入原くん!私もあの文化祭の件ラッキーって思ったんだ。あのね…私も…」 ねぇ入原君、いつもお迎えに来てくれる人は、私の中の王子様なんだよ。
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