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アイドロイド
その日、私は記者としてアイドル・アンドロイド、
通称アイドロイドの取材会場となる広場を訪れた。
12体のアイドロイドが姿を現すと、
その人間のような動きと愛らしさに、
様々なメディアからの報道陣は、
一斉に賛嘆の声をあげた。
開発責任者の博士が、
『本日は歌をお聞かせすることはできませんが、
この通り開発は進んでおります……』
といった趣旨の言葉を述べている。
しかしその時、1人の男が突然会場に飛び込んできて、
『こいつら本当は軍事用だ! 外で調べてもらう!』と叫び、
手に持ったリモコンのような装置のボタンをおすと、
『追随、護衛!』と喋った。
彼が走り出すと何体かのアンドロイドがその後を追い、
残りは警備員達の行く手を一対一で阻んだ。
博士は『やめろ!』と言ったかと思うとなぜか、
『いや……逃げろ! 逃げるんだあ!』と叫んだ。
次の瞬間、恐ろしいことが起こった。
走る男が、アイドロイドにつかまった。
がしっ。『えっ?』 どごっ。『ぐふっ』
どさっ。『あぐっ』 べきっ。『ぎゃ』
めきっ。『ひい!』 ぐしゃっ。『ごぼっ』
警備要員を一撃で打ち倒したアイドロイド達も、
仲間に駆け寄り惨劇に加わった。
ばきぶちっ、ずるずるっ、ぐちゃっ……。
そして、血まみれのアイドロイド達は立ち上がり、
何事もなかったかのように停止した。
多くの人々は我先にその場から逃げ出し、
駆け回り指示を叫ぶ者や、悲鳴を上げ続ける者もいる中、
あまりの惨状に声も失った私達を含む何人かは、
ただ茫然と立ち尽くしていた。
私は博士のところに近づいて、
『あれは一体どういうことなんですか!?』と聞いた。
博士はどこか、上の空のような状態だった。
『実は予算が足りなくて……軍に費用を出してもらった』
私はさらに尋ねた。
『大問題になりますよ! 国際公約違反です!』
博士は答えた。
『いや内密に、他の7か国にも……』
私は驚き呆れた。
『八つ股かよ! それにしてもむごい……。
第一こんなに高価いものを作っても、
戦車などには効果がないのでは!?』
博士はくわっと目を開いたかと思うと、反論した。
『戦争とは、そういうものだ!
まず、非装甲車両や歩兵部隊を派手にバラして注意をひき、
重装甲部隊を集めてから、体内の中性子爆弾を起動する』
私は絶句した。
『あ……貴方達は何を考えているんだ!
民間人に偽装したロボット兵器を使ったうえに、
核戦争まで始めるつもりだったんですか!?』
博士は何かを思い出そうとするように顔をしかめた。
『確か……最後に来た連中は……ええと、
国籍不明の連中がそのアイディアを出して、
さらには反物質爆弾の技術も提供してくれた』
私は博士の精神状態が心配になって、こう尋ねた。
『大丈夫ですか博士!?
どこの国だか分からないとか、
SFじゃあるまいし反物質なんて今の技術では……』
博士はとうとう、頭を抱えてうずくまってしまった。
『うう……やつらは警備システムを素通りして、
基幹電子頭脳や生産設備をいじり回し、
私達も全然それをおかしいと思わ……思えなかったんだ』
そして何かに気づいたように、顔を上げて私を見た。
『ああ、そういえばこんなことも言っていた!
〝記録も取ったし、後は馬鹿共がこれを使って自滅すれば、
残りは全て、第一発見者である私達のものになる〟……』
私は何か、とても嫌な予感がしてアイドロイドの方を見ると、
彼女達もこちらを向き、会話を見聞きしていたようだった。
各機の目がそれぞれ異なる色に輝き、それが点滅し始めた。
そして、世界が白い閃光に包まれた。
……しばらくして、破滅した惑星の上空に、
二人の調査員が乗る宇宙船が到着した。
『間に合いませんでしたね』
『現地の支援要員も、連絡を絶ったままです』
『今頃はまた、どこかの側近種族が発見者として、
名乗りを上げているのでしょう』
『銀河系統一に貢献した好戦的種族達の暴走は、
もはや皇帝種族にも制御できない模様です』
『地球など最重要の発展途上惑星だけは、
絶対に守り抜かねばなりませんね』
『秘密支援方式を取る以上、全ては管理できません。
彼女達自身の努力にかかるところも大きいです』
『これまでの平和的発展への支援が、
無駄にならなかったことを願いましょう……』
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