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潜水艇はまもなくこの星オンディーヌの都市遺跡フーケーへと到着する。巨大な遺跡美術館が有名で、オンディーヌの一番の観光スポットでもある。観光の謳い文句は、本物と見まがうほどのリアルな木造彫刻群。
「ここの遺跡は、人々や動物たちがずらっと並んでとても迫力があったね。あれをはじめて見たのももう、10年も前のことになるかなあ。巨大なクジラと、ひとりの少年とひとりのおじいちゃんが並んでいて、ちょうどピノッキオみたいだねって、きみと笑い合ったっけ。」
ここの遺跡をはじめて発見したのは、なにを隠そうぼくとひとみのふたりである。ちょうどここに記念レリーフが。
“宇宙飛行士・潜水士水野光が単独でオンディーヌ探索に成功したことをここに記念する
水星暦221年8月7日”
「単独でって書いてあるけれど、ひとみといっしょにこの星を捜索したんだよね。この部分だけ直してくれないかな。水野光及び水野瞳両氏によりオンディーヌ探索は成功した、とかさ。ねえひとみ。」
ひとみは返事をしなかったが、なんとなく不満気な様子が見て取れる。ひとみもちゃんと、人間として数に入れてくれないと。何度も水星政府にそう訴えたのだけれど、政府はついに全てを闇に葬り去ってしまった。この遺跡も、観光地化のためにわざわざ嘘をついて、ほんとうはポンペイのような遺跡なのに、アートだ写真映りがなんだのって。
マスコミはいつだって自らの都合のよいものだけ選択し、都合の悪いものはどこかのゴミ箱に捨てられフタをされる。
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