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慣れた道を歩いてたどり着いたのは僕の大切な人の家。
家の前には連絡を入れて置いた光姉さんが立っている。
その顔は複雑そうな顔をしていた。
「ふーちゃん」
その呼び名が懐かしく感じた。
でも心の窮屈さはもうない。
「中にいますか?」
「いるよ。でも……」
光姉さんの話を遮って僕は頷いた。
「大丈夫ですから」
嘘でも気遣いでもない。
僕が来たのは大切な人に会うため。
一度愛を紡いだ一人の女性。
忘れることはない。
だからここに来た。
新しい道を歩むために。
光姉さんも覚悟を決めたらしく僕を部屋の中へと案内した。
家の中に入るのは久しぶりだった。
外で別れたり眺めたりすることが多かった僕は小さい頃を思い出す。
その思い出はほこりをかぶりながらも輝いている。
リビングに入ると人の声がする。
楽しそうという言葉だけでは終わらない声。
僕は今からそこに呑み込まれるように入る。
どんな反応があるのかも、どんな言葉が出るのかもわからない。
でも始めるんだ。
僕が切り開く。
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