prologue 終わりのプレゼント

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近所の公園。 特に何もなくてただ待ち合わせをするためだけにあるような公園だ。 その公園に元気な声が響くと何となく心が落ち着いた。 白いフリルのシャツに黒い短パン。 いつもズボンをはいていて、夏はずっと短いものをはいている。 規則性を覚えた僕は何となく服装の予測をしていたのかもしれない。 元気だな。という一言の感想で尽きてしまう。 他の女の子には通用しないとわかっているから口には出さないでおく。 「久しぶり! 元気だった?」 肩くらいの髪を手ぐしで整えて僕に近づいてくる。 昔は髪の毛のことなんて気にしない子だったのに、今ではもうすっかり女の子なんだと父親のように思っていた。 都築の笑顔を見ているとこちらも元気にしなくてはいけないという気になる。 だからいつも通りの笑顔は嘘偽りなかった。 「元気だよ。都築は大丈夫なの? 体調とか」 都築は昔から体が弱い。 と言っても病的ではなくストレスで体調を崩すことが多い。 会う度にその話をするので都築ももう慣れたように話している。 「うーん。先月は少し体調崩したけどここ数日は平気。やることが増えたからね!」 「また何か始めたの?」 都築は多趣味だ。 普段、子供の専門学校に行って残りの時間は自分のために使う。 真面目で自我が強い。 だから一つの事に熱中すると本格的になっていくのだ。 「最近、絵を描くのに力を入れてるの。子供たちに絵を描かなきゃいけないから」 「そういえば保育士資格も絵の技術が必要だったよね」 「うん!」 昔から保育士になりたいと言っていた都築は今、とても楽しそうだ。 子供が好きなのはよく知っていた。 あまりに好きすぎて突然、変なことを言ったこともあった。 昔は言えなかったが今なら言えるかもしれない。 そう思うと困らせてみようといたずら心が動く。 「昔、ふーちゃんと私の子だったらどっちに似ると思うとか言ってたよね」 「うぅ」 痛いところを突かれたように顔をしかめる。 何度かこのからかい方をしているので訂正する気力もないらしい。 「そのからかい方好きだよね、ふーちゃんは。自分だってちーちゃんをお嫁さんにするとか言ってたくせに」 「あ、そ、それは……」 からかったつもりなのに跳ね返されて自分が傷を負う。 嫌味っぽく言っているが、続きは楽しそうに笑っていた。 それが僕にも伝わっていつも笑顔になっている。
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