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「そういえば、なんで呼び出したの?」
都築の一言でやっと今日の本題を思い出す。
片手に持っていた袋を都築の目の前に出すとなぜか顔が熱くなって目をそらした。
「誕生日、だっただろ……」
今回のプレゼントはいつもよりも選ぶ時間をかけた。
今までなら文房具や可愛い見た目の食べ物を何も考えずに渡していた。
だが、今回は少しだけ勇気を出してアクセサリーを選んだ。
店に入るのに一苦労し、さらに趣味や使い道まで考えていると全てが同じように見えてきて困り果てた。
最終的に選んだのは都築が今手にしている髪飾りだった。
「え! これふーちゃんが選んだの? おばさんじゃなくて?」
「僕だよ……」
正直、肩までの長さがどう結べるか知らないし、何色がいいか、何がついていたらいいかわからない。
でもこの青く澄んだ色の花がついていた髪飾りは一目で続きを連想させた。
都築は自然が好きでその中でも海が好きだった。
だから海を連想させるその髪飾りが良かったのかもしれない。
「ありがとう! やった! 嬉しいー」
眺めても何も出ないのに、都築は嬉しそうに髪飾りをきらきらとした目で見つめていた。
「そういえば、ふーちゃんも学校どうなの?」
「僕は普通だよ。いつも通り勉強して人間関係も上手くいってる」
僕は教師を目指して大学に入った。
都築が保育士なら教師も悪くない。
そう思った頃もあった。
でも今は自分の意志で勉強して友達を作って充実した生活を送っている。
平和過ぎて脳が錯覚を起こしそうなほどだった。
「やっぱりふーちゃんは完璧人間に見えるよね」
「昔からそう思われているみたいだけど」
僕は言動から好かれるらしく委員やリーダーなどなぜか中心となって動いていた。
都築に勉強を教えているうちに自分も身に付いたのか成績もよく、完璧人間と呼ばれるようになっていた。
「でも、ふーちゃんは怒ると怖いからな。やっぱり完璧じゃない」
力強く頷いて結果を出した都築は満足したのかもう一度髪飾りを見て笑った。
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