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姉妹は、かわいく手を振って、仲良く手を繋いで帰って行った。もしかしてと思って、着物に白い割烹着、レトロな買い物籠を持った、優しい感じのおばあちゃんを見かけなかったか尋ねてみた。けれど、二人とも見ていないと言っていた。
あのおばあちゃんはどこへ消えてしまったのか。一体、なんだったのか。結局、わからないままだった。
「ただいまぁ。はぁ、疲れたぁ」
「お帰り。あんたの好きな唐揚げ、調度、揚がったよ」
久しぶりに聞く、母の声。懐かしい家の匂い。大好きな唐揚げが揚がった匂い。
リビングに入ると、テーブルの上に古いアルバムが積まれていた。
「何?これ。お母さんの?」
「えぇ?あぁ、それ?押入れの整理してたら出できたのよ。おばあちゃんのアルバム」
おばあちゃんは、わたしが生まれるとすぐに逝ってしまった。だから、おばあちゃんの記憶はない。
「ふぅーん」
何気なく、二、三ページめくった。
「あっ!?」
思わず声に出た。そこには優しくカメラに向かって笑っているおばあちゃんが映っていた。着物に白い割烹着、レトロな買い物籠。それはあの日、あの時、喫茶店の軒下で、わたしを「ゆりちゃん」と呼んだ、あの甘い、優しい香りのするおばあちゃんだった。
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