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「おばあちゃん、なんで知ってるの?わたしの名前。もしかして、ストーカー?」
「はははっ。そんな薄気味悪いもんじゃないよ。もうすぐ、ゆりちゃんが生まれた家に帰るでしょ?そしたら、わかるよ。きっと」
「おばあちゃん、そんなことまで知ってるの?」
「そうだよ。ゆりちゃんのことはなんでも知ってるよ。そんなおばあちゃんが言うんだから大丈夫だよ。上手くいくから。心配しなくても大丈夫」
「うん」
堪えていた涙が瞬きとともに溢れ、わたしの手を握るおばあちゃんの手にぽたぽたこぼれ落ちた。おばあちゃんは「あらあら」と小さくつぶやくと、ハンカチで優しく拭いた。甘い香りがふわっとわたしを包む。
おばあちゃんの言ったこと全てを信じたわけじゃない。ただ、誰かに慰めて欲しかっただけかもしれない。でも、うれしかった。刺刺した気持ちが、少し和らいだ。
おばあちゃんの優しい香りがするハンカチが、わたしの頬を包むたび、窒息しそうだった心が呼吸を始めた。
「ほらっ。雨、止みそうだよ」
おばあちゃんの言葉に促されて、空を見上げる。
さっきまで、バシャバシャとそこら中を叩き、「絶対に止んでやるもんか」くらいの感じで降っていた雨が勢いを無くし始めていた。真っ黒な雨雲に覆われていた空は太陽の面影をちらつかせている。
「本当だ。もうすぐ、止むね」
そう言っている間に、みるみる雨の勢いは弱まり、空に陽が差し始めた。雨粒は次第に細かくなり、霧吹きで吹いたようになった。
霧雨が薄く出ている太陽に照らされ、きらきら輝いている。上空では風が雨雲を追いたてる。追い立てられた雲の隙間からから太陽がその姿を現した。と同時に、それは現れた。
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