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小学校に入って二回目の夏休みを迎えるにあたって、私は真っ白な計画表に予定を書き込みながら、わくわくと胸を躍らせていた。
今年はどこに行くんだろう。去年は、海水浴と、北海道にいるママのおじいちゃんたちのところ、さやかちゃんちのお庭でやったバーベキュー、あとはみんなでプールにも毎日のように行ったっけ。今年は身長が五センチも伸びたから、深いほうのプールに入れるかもしれない。
「ねえママ。今年の夏休みはどうするの?」
美沙はどこに行きたい?
そう返ってくると思ったのに、ママは困った顔をした。
「今年はちょっと、どこにも行けないかな。我慢してね」
「どうして?」
「おばあちゃんがいるから。美沙だって、おばあちゃんが大好きでしょ?」
どこへも行けないのは、私がおばあちゃんを大好きだからなの?
でも、ママはそそくさと「さ、夕飯の仕度をしなくちゃ」と、キッチンへ行ってしまったから、聞けなかった。
「美沙はもうすぐ夏休みなんだねぇ。楽しみだろう」
ソファに座ったおばあちゃんがにこにこと笑っている。
楽しみだったよ、今の今まではね。
だけど、そんなことは言わなかった。私はやっぱりおばあちゃんが好きだったから。
あんなに待ち遠しかった夏休みがどんどんと流れて消えていく。一枚ずつめくられていくカレンダーをうらめしく眺める日が続いた。
「美沙、ママちょっと買い物に行ってくるから、おばあちゃんと一緒にお留守番しててくれる?」
「ええ? 友達のところに遊びに行きたかったのに」
「嘘ばっかり。昨日は友達みんな遠くに行っちゃってつまんないって文句言ってたじゃない」
私が言葉に詰まっている間に、ママは「じゃあお願いね」と、ひらひら手を振って出ていってしまった。
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