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勝利宣言が出された時、町の人々がどれほど沸き立ったかなど言うまでもない。しかも、その立役者がこの町でも慕われていた男である。カールとその仲間たちはまさに、この町のヒーローと言っても過言ではない存在だった。
「あ、来た!叔父さんだ!!」
ヒーローの姿を一目見たい国民は少なくない。一部怪我が重くて入院している隊員以外は、戦車や王様の馬に乗せられてゆっくりと街中を進んでいった。戦車と馬なんてミスマッチと言うかもしれないが、昔からこの国で勝利の凱旋をする時は、王様の白馬を使うのがならわしなのである。文明が進み、自動車や戦車が出現した今でもそれは変わらないのだ。
その一番前の戦車の上。部下と一緒に笑顔を振りまいている人物に気づき、僕は歓声を上げる。
「叔父さん!カール叔父さーん!おめでとう、おめでとうー!」
僕の声に気づいたのか、叔父さんははっとしたようにこちらに顔を向けた。一瞬見えた、疲れたような表情。きっと過酷な戦いだったのだろう、叔父さんは頬に大きなガーゼを当てているし、随分と日焼けしたようだった(サックル共和国は非常に暑い国なので、温暖な気候のオベロン王国住民としてはきっと苦労も多かったことだろう)。しかし、暗い顔はその一瞬限り。すぐに彼は笑顔になって、こちらに手を振ってくれる。
「今日はどうせ、あんたの家でみんなでご飯食べるんでしょ?叔父さん夫婦と従姉も入れてさ」
ベッキーがちらりとこちらを見て言う。
「いいなあ、私も親戚だったらご一緒したかった!ヒーローと二人で語り合う時間もありそうじゃない、羨ましい!」
「あはは、叔父さんに伝えておくよ、ここに可愛いファンがいますって」
「可愛いより、美少女のファンの方がいいわ!私は将来、モデルになって世界中を魅了するんですからね!」
ふふーんと背を逸らす彼女は、まだまだ小柄で子ども体型である。まあ、僕も彼女同様十二歳なので、人のことをどうこう言えない言えないのだが。
ついつい見つめた己の腕はまだ細く、筋肉らしい筋肉もほとんどない。もっと体を鍛えなくちゃな、と常々思っていた。
――そうだ。僕も叔父さんみたいな兵士になるんだ。どうすればいいか、叔父さんに訊いてみよう!
この時、僕は気づいていなかった。
その選択を、死ぬほど後悔する時が来るなんてことは。
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