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「なるほど、やはりサックル共和国は暑さが一番の敵だったか」
「そうですね、義兄さん。水や資源は豊富だったんですが、いかんせん湿度が高くて。洗濯物が洗った端からカビるのは本当に勘弁してほしかったですよ。ああ、上陸直後は俺の部隊は後方で、のんびり洗濯するくらいの余裕はあったんです。いい具合に雨風しのげる場所も確保できましたしね」
「おお、そうなのか」
いつもなら、僕と両親だけで食べる食事。今日は叔父さんとその奥さん、従姉と祖父母も入れての多人数でのご馳走になっていた。お祖母ちゃんがとにかく息子に精のつくものを食べさせようと、大きなイノシシ肉を奮発してくれたのである。おかげで僕はお腹がパンパンだった。叔父さんの分なのに食べ過ぎでしょ、と母には窘められたが当の叔父さんは笑っていた。
それで今は、食後のワインタイム。ちなみに、僕のお母さんが叔父さんのお姉さんにあたる。叔父さんもお父さんもだいぶ酔っぱらっているようだった。どっちもワインボトルが空くペースが早いし、顔が紅潮している。
「ねえねえねえ、お父さん!僕も叔父さんとお話したい!お父さんばっかり狡い!」
僕が頬を膨らませると、お父さんもようやく気づいてか“すまんすまん”と笑った。
「そうだ、カール。息子が、あんたに訊きたいことがあるらしいんだ。相手してやってくれ」
「そうなんですね。何かな、ウォルト?」
「あのさ!」
ドキドキしながら、僕は宣言する。
「僕も、叔父さんみたいなヒーローになりたいんだ!将来は陸軍に入って、みんなと守る兵士になりたい!でも、僕は小さくて弱いから……どうすれば強くなれるかな!?」
僕の言葉を、叔父さんはどのような気持ちで聴いていたのだろう。傍に座っているお父さんは、にこにこしながら叔父さんの反応を待っている。叔父さんはワインをぐいっと煽ると、そうだなあ、と深くため息をついたのだった。
「よし、男同士の会話だ。……ちょっとベランダに出て、二人で星でも見ながら話そうか」
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