七海と人形の願い

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開いたメモ用紙をすぐにハートの形に折りたたむ。中学生の頃はこうしていろんな形にした手紙を交換して楽しんでいた。手紙の内容は当時の苦い思い出。 学生時代のよくある女友達の仲間外れのターゲットに選ばれた私は、信じていた友達にも無視をされた。これはその友達からのもう話かけてこないでという返事。こんなものまで残っていたなんて思わなかったな。私はその手紙を細かく千切ってゴミ箱に捨てた。 1か月くらいで次のターゲットに移ったけれど、その友達との仲は戻らなかった。 違う。謝ってくれたその子を許すことが私には出来なかった。 嫌な思い出を忘れようと、私は段ボールの中に手を伸ばす。すると、30cmくらいの大きさの菓子箱を見つけた。そっと出してみると、菓子箱には拙い文字で書かれたお札のような物がびっしりと貼られていた。 「何これー。お母さん、私こんなもの持っていた覚えないんだけど」 「あぁそれ?でも確かに七海の押入れから出てきたのよ」 「私の?」 箱はお中元に貰う煎餅が入っているようなもの。持ち上げてみても軽いということしかわからない。試しに振ってみると何か入っているようだ。 「開けちゃえ」 どうせ私の物だ。開けた所で誰かに迷惑をかけることもない。箱中に貼られたお札のようなものを破って開けてみると、とても懐かしい物がでてきた。
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