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お母さんは座っているソファの目の前のテーブルを指でさして笑った。リビングのテレビの前にはローテーブルが置いてある。それは子供の頃から変わらない配置で、私はよくそこに私物を置いていたのを思い出した。
と言っても、人形はほとんど部屋に置いていたから、その時は特別だったのだろう。
「それでね、急におじいちゃんに電話するって言い出してね。暫く話していたと思ったら、なんでもいいからこの人形が入る空き箱をくれーって言ってさ。
渡したら今度はお絵かき帳に何か書き出してねー。もう泣きながら書いているから、拓海は必死なんだろうけど、可愛くて笑っちゃって。
私が少し席を外して、リビングに戻ってきたら人形も、拓海もいなくなっていたから不思議に思っていたのよねー。まぁすぐ忘れちゃったんだけど」
「もー!私の大事な人形に悪戯したのは拓海だったんだ。急に無くなったからすっごく探したんだからね。お母さんもなんでそんな大事なこと忘れてるの」
「ごめんごめん!」
お母さんは笑いながら手を合わせるけど、これは絶対悪いと思っていないやつだ。まったくもう。今度拓海が返ってきたら文句を言ってやろう。
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