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今日は駅前のホテルに泊まるという菅谷さんを見送り、俺達は帰ってきた子供達と共に少し遅い夕食を食べた。 一点を見詰めて白米をかき込む春彦に、相変わらず料理に舌鼓みを打つ俺。年長者の異様な雰囲気を察したのか、千夏も千秋も黙々とご飯を食べる。 「おかわり」 「はい」 いつもの光景。いつもの日常。 今日でおしまいだな。 ろくに会話もしないで俺達は寝た。これまたいつものように2枚のせんべい布団をくっつけ4人でぎゅうぎゅうになって眠るんだ。俺は千秋を腹の上に乗せて背中をさすってやりながら、春彦は千夏と向かい合う形で両腕で優しく抱き締めてやりながら、それぞれ子供達が寝るまで静かに起きてる。 今日も春彦が起きているのが気配で分かった。 「…速水さん」 「ん?」 囁くような春彦の声が無音の部屋にやけに響く。 「僕達、明日母さんの所に行きます。」 「ん」 「それで…もう一度、やり直してきます。」 「そっか。それが良いだろうな。」 「はい。」 「…」 「…」 「…千夏と千秋にゃ両親が必要だ。もちろんお前にも。」 「はい。」 「大事にすんだぞ」 「はい。…今まで、ありがとうございます。」 「良いよ別に」 手を伸ばして頭を撫でようとしたけど、体を引かれてしまったんで出来なかった。 「本当に最後まで懐かなかったなお前だけは。」 つい本音がこぼれて俺は思わず笑ってしまった。 「春彦は分かってたからだろうな。変に甘えたら情が移って離れる時に辛くなるだけって事。」 「それは…」 「俺は辛いよ。しんどい。情が移っちまったどころじゃねぇよ馬鹿。」 「速水さん」 でも、さ 「お前らに会えて良かったよ。本当に家族になったみてぇだった。家族なんて俺は知らないけど、一生守っていきたいなぁって思ったぜ本気で。…ありがとうな。」 照れくさかったからもう寝るか~なんて言って布団を被り直した。春彦が何か言いたそうな気配を感じたけど、とてもじゃないが聞く気になれない。 会えて良かったなんて言われても俺はきっと返せないからさ。泣いちまう。つか離せなくなる。特に春彦なんか嫁に貰いたくてしょうがね~んだよ。あぁ勿体無い。一生可愛がってやるのに。 伸ばした手をまた千秋の背中にのせ軽く撫でてやると、ふと、千秋の呼吸がおかしい事に気づいた。 「千秋…?オイどうした」 「え?」 驚いて電気をつけると、千秋が声を殺して泣いていた。 「千秋起きてたの!?」 「う。う…パパ…うぇぇ…」 そのまま体を起こした俺にしがみついて声を上げて泣く。それを合図に春彦の側で寝ていた千夏まで泣き出した。 「千夏まで…」 「ふぇ…お、にぃちゃ…千夏たち、パパと、は、離れ…るの…?」 「やぁ…やぁなの」 泣き声の合間に切なそうに問う千夏達に、俺達は戸惑いを隠せない。布団にくるまって泣いていた千夏も俺に抱きついてきた。 「千夏、千秋。お前ら母ちゃんに会えるんだぞ?新しい親父も良い人そうだし、絶対楽しいって。な?」 「でもっ…パパにあえなくなるんでしょ?千夏やだよぉ」 「うぇ…うぇく…ぱぁぱが、いいっの~」 降参。降参だよ子供達。もう俺には何も言えねぇ。このまま誘拐しないだけでも俺を褒めてやってくれ。後は任せた春彦君よ。 縋るように春彦に目を向けて、俺は固まった。 「は、春彦…?」 なんと、あの春彦まで泣いていた。
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