2人が本棚に入れています
本棚に追加
電話
花が呑気に紅茶のおかわりを入れ出したところで葉は明日も仕事があるからと席を立った。とは言っても、今から仕事を入れるところなのだが。
スマホを取り出し、呼び出し中の文字と共に署へ向かう。
『Hi!』
「…珍しいことは続くものだな。お前が電話にでるなんて」
『ちょっとひどくなーーい??俺んとこ今何時だと思ってんの?せっかく出たのにぃ。どうした?!寂しくなっちゃったー?!ックックック。』
ふざけた口調にふざけた言葉。それに続く若干の引き笑い。
葉は”ヤツ”に電話をかけていた。
「あの娘、何者だ。」
『ちょっと葉さん?!俺のジョークは無視?!じゃあこんなのはどう?実は俺、今日のために一発ギャグを仕込んで…』
「お前、どこまで知っている?」
音はしなくとも電話の向こうでヤツがニタリと笑うのがわかる。
「ええぇーー?随分と抽象的だなぁ?!?!らーしくなーいねーー??よーうさん?!」
わざとらしい間の開け方に苛立ちを隠そうともせず葉は無言で電話を切った。この調子のヤツに関わってもロクな情報が得られないことくらいわかる。それどころかこっちの方が持っていかれかねん。情報も体力も。今日はもう仕事をやめて帰ろう。たまにはそんな日があってもいいさ、と自分を納得させ、葉は駅へ向かった。
図書が目と鼻の先にある、駅に。
最初のコメントを投稿しよう!