電話

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 葉が帰った後、花はひとり紅茶と用済みになった書類を片付けていた。サイン欄に「兄塚化」と書かれたその書類を。花はわざとサインを完成させていなかったのだ。  あの子は何にでも首を突っ込むきらいがある。幼いときのヤツにそっくりだ。ヤツのその性格は今に至るまで治っていないが。  そんなわけで、花は星歌の質問攻めにあうことをあらかじめ予想し、サインを書いたフリだけしておいた。その時点で葉が怪しむことも織り込み済みだ。  時刻は午後8時ぴったり。星歌が家を出てから1時間半がたった。本を返すのにどれだけ手間取ったとしても遅い時間だ。そもそもあの図書館には“24時間返却可能ポスト”があるため、手続きなどなく、そこに投函すればいいだけになっている。  感でしかないが、あの娘、また何かに首を突っ込んでいるのではないか。  そう思い始めた矢先、新塚邸の黒電話が鳴った。この電話を鳴らす相手など限られている。  花は知っている。“悪い”感ほどよく当たるものはない、と。
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