命の架け橋

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 お迎えが近づくと自らの人生を走馬灯のように蘇らせる記憶の旅が始まる。 何処で知ったのか物忘れが多い中、その事だけはちゃんと覚えていた。  ボケ老人でも忘れないとは不思議なものだ。  誰もいない病室、今日は孫娘が出産した赤ん坊を連れてくると家族の者は最寄り駅まで向かった。  一人静かに眠りについた時――、 心地良い感覚が全身に広がると共に、子供達を立派に育てるため懸命に働き続けた頃の記憶が頭の中で彷徨い始めた。 『いよいよ、ワシにもお迎えが近づいたようじゃ』
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