命の架け橋

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 そして先程から脳裏を過る働き盛りの四十代――、 理想の大人を想像していたが、現実は仕事に明け暮れ家族には何もしてやれなかった。  三十代――、 子育てに翻弄した楽しい記憶が蘇る。反抗期の息子に言われた『死ね』と言う言葉。あの頃の息子の願いが叶うのに五十年を費やしたなと、一人口元をゆるませる。  『うむ?』   この頃、人生で唯一やり残したことがあったような気がするが上手く思い出せない。  二十代――、 今も変わらず愛する妻と出逢う事が出来た忘れられない記憶の数々。我が人生で最も感謝すべきことは、妻より先にこの世を去れる事だ。苦労を掛けた分、残りの人生は自由に過ごして欲しい。  十代――、 あの頃はただただ大人になりたい事だけを考えていた。背伸びしてした沢山の大人の真似事は、今思っても青臭いガキでしかないがあの頃の自分達の世界では全てがキラキラしていた気がする。
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