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そして、十にも満たない幼い子供の頃の記憶が駆け巡る。
『そろそろ、時が来たか――』
「ピッ……、ピッ……」
病室に響く機械音を遮る様に、赤ん坊を抱えた孫娘達が扉を開け入室してきた。スヤスヤと寝息を立てる祖父の顔を見つめ、小さな手のひらは彼の小指をギュッと握りしめる。
「おじいちゃん、おねんねでちゅね」
「すぐに目を覚ますだろう」
そんな事など知る由もなく、夢の世界では子供の頃の友達と公園を駆け巡る真っ最中だった。
あの頃はただ毎日が楽しくて、名前も思い出せない程沢山の友達がいたものだ。特に私にとって思い出す一番の友達の名は……。
一番の友達、そう、親友の名は……。
『思い出せない――』
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