命の架け橋

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 甘え声で泣きながら、ペロペロと頬をなめる愛犬の記憶――。  名前すら忘れてしまった当時の愛犬は何故、イジメられていた私を気使うように常に寄り添い、嫌な事を忘れさせる様に私だけに懐きそばを離れる事が無かったのだろうか?  この世に残す最後の疑問になるのかと心の中で察した時、耳元で愛犬が甘え私を呼ぶ鳴き声が聞こえた気がした。 「くぅううんっ」 「ふふふ、おじいちゃん笑ってるね。あっ! おじいちゃん」  薄っすらと開いたつぶらな瞳に赤ん坊の微笑む顔が見えた。 「ピッ……、ピッ……、ピ――ッ―――――」 「おじいちゃん! おじいちゃん……」  自分でも分からない。  可愛い赤ん坊の笑顔を最後に見届け、言葉にならない何かを呟き私はこの世を去った。
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