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夕方、都内の大学に通う私、池谷華(はな)は駅前の空を見上げた。 天井が下がり始めているみたいだ。まるで空に灰色の蓋をしたようだ。 夏の天気は変わりやすい。今にも雨が降り出しそうだ。 あたりには微かにコンクリートの濡れた匂いが立ち込めていた。 もうどこか近くまで降り出しているのだろう。 私は猛ダッシュで自転車を柏山駅から住宅街まで走らせた。 一雨降る前に、家に到着したいと焦っていた。 雷が背後に光る。雷に打たれるかもしれない。 更にスピードを上げて自転車を漕ぐ。 スカートがめくれ上がる。そんなの気にしていられない。 雷に打たれたくない一心で。
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