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「図書館に行くなら私も連れてってよ」
「え?」
「世界中の図書館に」
「君、死にたくないんじゃなかったの?」
「勿論」
「じゃあ、どうして?」
「探すの。この呪いみたいなモノを解く方法を。そしてあんたも探すの。死ぬ方法じゃなくて、仲間をね」
「仲間?」
「居るかもしれないじゃん?」
「仲間……が……?」
男の目からぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。
「そんなの、考えもしなかった」
「自意識過剰だよね。私も同じ。逃げてばかりいた。どうせ世界中を放浪するなら、雨から逃げ回るより、あんたと一緒に探し求める放浪の方が良い。何より移動費がタダだし」
「晴れてる時は僕の姿見えないよ?」
「でも声は聴こえるから……」
華子の視線は男と合っていない。
男が振り返ると、もう雨は止んでいた。
華子が暗闇の中で電気のスイッチを探すようにして両手を突き出し、男に近づいて来た。
そして、華子の両手が男の頬を包んだ。
「ほら。触れた。なんか濡れてるね。泣いてるの?」
直後、バスタオルが床に落ちて中から小さな蛙がピョンと飛び出し男を見上げる。
男はしゃがみ、バスタオルで優しく蛙の体を拭いてやった。
人間に戻った華子はニッと男に向かって笑う。
「一緒ならどうにかなりそうじゃない?」
「うん」
男も笑顔になった。
「あんた、名前は?」
「名前?うーん……忘れちゃったなぁ……」
「じゃあ、雨太郎ね」
「雨太郎?まあ、怪人よりマシか」
「雨太郎」
「ん?」
「階段下にね、私の服とリュックが落ちてるから取って来てくれる?」
「わかった」
「……待って」
「ん?」
「やっぱいいや」
華子は部屋の隅にあるトランクから服を出し身に付け、窓を開いた。
「ねぇ、雨太郎。下に水溜まりがあるよ。飛び込んだらどっかに移動出来るの?」
隣に来て、雨太郎も下を見た。
「うん。図書館近くの水溜まりに行けるよ」
「よし。じゃあ、行こう」
「華子、リュックは?」
「もう要らない。重いし」
「そう。じゃあ、行こう」
華子と雨太郎は手を繋ぎ、窓枠を蹴ってジャンプした。
生き抜く術を探す為に。
おわり
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