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なんでも、夕立のあった夜に美術館や博物館、金持ちや有名人の家が何者かに侵入されるという。
しかも、何も取られずただ侵入された形跡だけが残っているらしい。
いずれにしても、貧乏で無名な自分には全く関係のない話題である。
「ここら辺の建物なんてみんな古いし、ハナコの部屋はケチな家主が元々は屋根裏の物置だったのを無理に改装して貸してるの。風穴があちこちにあるでしょ。ただでさえセキュリティに問題が有り過ぎよ。それにね、無人なのに足音がするって噂が昔からあったし……」
(だから借りたんだけどね)
「……でね、不安だったら今夜はうちに来ても構わないわよ?」
(あ)
華子のつむじにポタッと滴が落ちたのを感じた。
「ありがとうございます!大丈夫です!気をつけますから!」
ありったけの力でおばさんを振り払い、中に飛び込む。
ザーザーと雨音が聴こえてきた。
頭を触る。
ぬるっとした感触にため息をつき、落ちたリュックをそのままにして最上階を目指し階段を上った。
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