夕立の出会い

　それからどれぐらい経っただろう。
　沈黙のまま時だけが流れた。
　ざあざあという雨の音だけが藤棚の下に響いていた。
　たまに雷らしき音も聞こえたけれど、二人とも口は開かなかった。
　少なくとも私は、開くことができなかった。
　どう声をかけたらいいかもわからなくなっていたからだ。

　けど、心は決めていた。
　この人について行こう。

　やがてあたりが静かになり始めた。
　そう、夕立の終わりが来たのだ。

「ああ、ようやく止んだ……」

　彼がそう言いながら見上げた空は、綺麗な茜色だった。