26人が本棚に入れています
本棚に追加
突然稲妻が走り、大粒の雨に襲われた。
傘など持っているはずもない俺は、とりあえず手近な軒の下で雨が過ぎるのを待つことにした。
赤いビニールの軒は、小さなカフェの入り口だった。
ポケットを探ってみた。少しの小銭が指に触れた。
コーヒーでも飲もうか。
いや、パンでも買って空腹を満たした方がよいのではないか。
少しの間逡巡し、ふっと笑いが込み上げてきた。
空腹を満たしたいだと?
いつまで生きるつもりなんだ?
死に場所を探してほっつき歩いていたんじゃなかったのか?
満腹になってから死にたいのか?
それよりは薫り高いコーヒーを一杯飲むほうが気が利いてるってもんじゃないか?
この店のコーヒーは一杯いくらだろう。
この小銭で足りるだろうか?
ドアの窓から店内の様子を窺ってみた
最初のコメントを投稿しよう!