雨女と晴れ男の恋

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 だって晴れているのはこの学校の一部、体育館の上だけで、あとはどんよりとした雲が覆っているからだ。まるでそこだけ雲を切り取ったように青空が覗いていた。 「うっそぉ……」  思わず言葉が出たのと同時に担任が教室に入ってきた。 ○  卒業式の間は日は射しているのに強い雨が降る、狐の嫁入り状態で周囲の人々は唖然としていた。  式が終わり、私が外に出た時もやっぱり雨は降っていたけど片科のお兄さんがいるところだけは晴れていて、その周辺でみんなが写真を撮っていた。 (私がいるのに晴れさせるなんて)  さすが超晴れ男、あなどれない。だけどちょっとうらやましい気もする。  私の雨では、みんなをあんな笑顔にできないから。また雨だ、とがっかりさせることしかできないから。 「君もこっちで写真撮りなよ」 「えっ」 「俺、すごい晴れ男なんだ。今だって、ほら俺の周りだけ晴れてるでしょ?」  ニコッと笑った片科のお兄さんにドキッとしてしまった。あのお調子者の片科と血がつながっているとは思えない。
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