雨女と晴れ男の恋

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「そう、覚えててくれたんだね」  よかった、と安堵の笑みを浮かべる片科さんの上空だけがやっぱり切り取られたように晴れていた。  持っていた傘も開いた様子はないから会社からここまでずっと雨に降られなかったんだろう。 「じゃあ行こうか」 「は、はい」  と、1歩彼に近づくと上空に薄く雲がかかり始めた。けど、日を遮るだけで雨は降らないようだ。片科さんを濡らす心配がないことに胸を撫で下ろした。 「なるほど、近づくと曇るんだね」 「えっ」 「会社を出た時は晴れていたのに駅に近づくにつれて暗くなって晴れの範囲も狭くなったからさ。相変わらず、龍神の力は健在のようだね」 「はい……」 「今日が初めてのプレゼンなんだって? それで気持ちが高ぶってるんだね」 「まあ、そんな感じです」  片科さんとそんな雑談をしながら歩いていたらあっという間に会社に着いた。  せっかく再会できたのにもうお別れなのかな……嫌だな。 「じゃあ俺はここで。プレゼンがんば」 「あのっ!」 「!」 「れっ、連絡先を交換してもいいですか? あの、また何か、その……なんというか」
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