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おじさんが死んだのも丁度夏で、その時ぼくはいつものように、お盆をちょっと過ぎるまで親の里帰りに付き合わされていた。
あの辺は特に言うべきこともない田舎で、祖父母の家も古くて大きい以外には特に言うべきことはなかった。おばあちゃんはやたら孫たちを甘やかしにかかるが、それも盆料理と菓子の山と果物による物質面でのもてなしが主で、つまりはこの話的には特に言うべきことはない。
いや、言うべきことはあった。それが余所では聞いたこともない“物雨”の伝承で、本当に特に言うべきこともない田舎にはありがちなこととして、ネットにすらろくな情報は落ちてなかった。昔の民俗学の高い本にいくつか記述があるらしいが、Google Booksの乏しいプレビューから察するに、本当に特に言うべきこともない奇妙な迷信として1、2行記述があるだけのようだった。
話を戻そう。
その夏も、ぼくはおじさんの家に行くのを楽しみにしていなかったと言えばウソになる。実際、菓子の山や(この話とは別の)おじさんが退屈してるだろうと忖度して連れてってくれる焼肉やプールを別にすれば、あの田舎で特に言うべきことがあり、唯一エキサイティングなのがおじさんの家だった。
しかし……ぼくは思いなおした。
去年の夏。あるいは正月休み。それどころか……今思えば2、3年前、あるいはもっと前から?
あまり楽しくないどころか、逆方向にエキサイティングな予感。
どうやら、親戚たちはおじさんのことを憎んでいるらしい。
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