物雨 一

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どれほどのものかは分からない。しかし、ぼくをおじさんと関わらせたくないという意図だけはビンビンに感じる。 思い起こせばそれは3年前、ぼくが日暮れまでおじさんの家で遊び呆けて帰ってきた晩のこと。 いとこの1人は若干将来が心配になるレベルで堪え性のない男で、こいつには夕飯後の花火タイムが待ち切れず、暗くなると即座に花火・第1弾を開始するという悪癖があった。そのいとこが花火を始める気配を感じると、年下のいとこたちも便乗してきて、大抵夕飯前に花火タイムが始まる。 ぼくは大抵この中に紛れて家に忍び込んだ。いや、紛れていたために今まで気付かれなかったというべきか。 ぼくには知る由もなかったのだが、その日は堪え性のないいとこが塾に行かされていて――信じがたいが、こいつはぼくより年上なのだ――日暮れ時の花火タイムはなかった。すなわち、両親はぼくの不在を訝しみ、よりによって「そうじゃない方」のおじ達を巻き込んで捜索隊を結成していたのだ。 おじさんの家――あるいは、おじさんの家と称する事実上の「そうじゃない」おじ夫婦宅近辺にあるプレハブ――を出て、自家消費用のかぼちゃや茄子が植わった畑の傍を歩いていると、家の方に夕闇に紛れて人影のようなものが見えた。それは「そうじゃない方」のおじの妻「じゃない方」のおばであるところのモモコさんであることが即座に分かった。 その時ぼくの方はなんとも思わなかったが、モモコおばさんの方には大した問題だったらしい。 というのも、人影の正体を見極めようとしっかり顔を向けていた結果、おばさんに真正面からたじろぐぐらいの形相で睨みつけられてしまったからだ。 土地を一段高くしている石垣から思わず落ちそうになるのを土壇場で踏み止まると、ぼくは早足に道路へ降り、祖父母宅に急いだ。 別に急ぐべき理由を知っていた訳じゃない。単にモモコおばさんが何かアクションを起こしてくる前に――何をする気か想像はつかないが――その場を離れたかっただけだ。 いくら腹立つことがあろうと、日暮れ後にわざわざ本家を訪ねてまで絡んではくるまい。その時はそうたかをくくっていた。
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