87人が本棚に入れています
本棚に追加
/203ページ
プロローグ
明け方に初雪が観測されたが、空は抜けるように青かった。
雲一つ無い青空。
氷のように冷たい風。
放課後。
学校の屋上。
フェンスの向こうに立つ彼女と、こっち側に立つ俺。
生と死の境界線。
絶望と不幸の境界線。
「実を言うとね、私、この学校、嫌いじゃなかったんだ。転校してきた時は、みんなが私に話しかけてくれてさ。結局、孤立しちゃったけど――それでも、あの時はね、本当は嬉しかったんだよ。なんだか、アイドルになった気分だった」
彼女は、明るく笑う。
「でも、なにより嬉しかったのは、君みたいな男の子に出会えた事かな」
「そうか……」
「だけど、やっぱり止まれないの」
「そうか……」
「本当は、一人で死ぬつもりだった。だけど、君に出会ったら、それが出来なくなっちゃった。一人で死ぬのが、寂しくなっちゃった。だから、死に場所にここを選んで、私が逝くところを君に見ていてもらいたいの」
「そうか……」
「約束、忘れないでね、池谷君。じゃーね」
そして、彼女は俺の前から消えた……
最初のコメントを投稿しよう!