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「あれ? 小さな女の子がやじ馬に紛れていたんですけどねぇ……」
「小さな女の子? 月曜の朝の歌舞伎町でか? ありえんだろう」
「そりゃ、俺もわかっているんですけど、居たんですよ……」
俺は、少し背伸びをして周囲を見回す。しかし、子供の姿など何処にも見えなかった。
「まいったな、どっかいっちまったか……」
そこに栗田が、怪訝な顔を作って牧さんに言った。
「峰山さん、どうもナーバスになってるみたいで……」
「仕方ないさ。こんな事件ばかり続くんじゃな。俺だって……」
牧さんは、こめかみを押さえて深い溜め息を吐く。
そこに、鑑識長である加山さんの声が上がった。
「牧課長、もう入っていいですよ」
どうやら現場鑑識が終わったらしい。牧さんは加山さんに手を挙げ、「行こうか」と、俺と栗田に言った。
規制線をくぐり、現場の中央に敷かれたブルーシートの側に立つ加山さんへと向かう俺達。言うまでも無く、ブルーシートの下に埋もれているのは自殺死体だ。
さて、今日はどっちだ……
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