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霊能力のような催眠術
全部屋を見て回ると事前に連絡を受けていたので見られても良いように掃除は万全、のはず。
身構えている私を横目でチラリと見たY団体の大先生は次の瞬間、押し入れを開けようとした。
大先生の思わぬ行動に焦った私はそこは開けないで下さいと慌てて駆け寄った。
しかし、これがいけなかった。今思えば私の心を揺さぶり催眠術をかけやすくするための行動だったのだ。
私の心の動きをY団体の大先生は見逃すはずはなかった。近寄ってきた私の腕をグイっとつかむと私の背中に手をあてた。
“君の中にとり憑いているモノを今から祓うよ。”
大先生に腕を引き寄せられて余計に心拍数が上がる。
予想外の行動にもはや身構えていた心は何処かへ飛んでいってしまっていた。
大先生が私の背中をゆっくりと擦ると全身の力が抜けてしまい、その場に座り込んでしまった。
あれ、体に力が入らない?!
“今、憑依していた霊が抜けたからね。もう大丈夫だよ。”
困惑していると大先生が耳元で優しく囁くように言った。
頭が真っ白になる。私は・・・。
何も考えることが出来ない。
それからY団体の大先生とIさんはお祓いをするようなリアクションをとりながら部屋をぐるぐる回って歩いていた。
お祓い代は大先生に渡したことは覚えていたが、お祓いを終えてからどんな話をしたのかよく覚えていなかった。
全身がダルくて頭にはモヤがかかったみたいになって、そして・・・。
意識が遠のいていく。
彼らが帰ってから私はそのまま倒れるように眠ってしまっていた。
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