ep.5

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──その夜は嫌な夢を見た。  夢の中でキイチは彼女に自分にしたのと同じことをしていた。  優しく抱いてキスをして、何度もその気にさせるような甘い言葉を耳元で囁やいた。  自分と唯一違ったのはキイチが彼女の首筋を噛んだことだ──。 「っ……!!」  うなされて目覚めた真柴の身体は嫌な汗でじっとりと濡れていた。張り付いた前髪をかきあげゆっくりと上半身を起こす。  視界に入った時計はまだ真夜中を差している──。  寝汗で濡れたパジャマが気持ち悪くて真柴はバスルームに向かう。  脱衣所の洗面台で鏡に映る疲れた顔をした自分と目が合った。 「誰にでも手を出す……か」  思わず失笑が込み上げる。 ──俺はキイチのことなんて何も知らなかったのに……何を知ったつもりでいたんだろう。  キイチのことだからきっと相手がどんなでも気がつくし、賢いから気遣いも出来る。キイチにはそれくらい朝飯前なんだ──。  洗濯機に着ていたものを全て投げ入れて乱暴にバスルームのドアを閉めた。  冷たいシャワーに打たれながら真柴は肩を震わせながらペタリと床に座り込んだ。 「やっぱ俺は大馬鹿Ωだ──」
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