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頭が重い──
今日は何曜日の何時なのか……。
動かない頭でぼんやりと真柴は考えた。
下半身がジンジンして、ちゃんと機能していない気もする──。
「腹……減ったぁ……」
隣で眠るキイチが枕に顔を埋めて唸り声を上げている。
「俺も──。置配頼もうか……」
痛みであまり身体を動かせない真柴は首から上だけをキイチに向けてその顔を眺めた。枕から少しだけ顔をずらして眉を下げたキイチもこちらを見ている。
「──身体無事?」
「無事に見える?」
「──ごめんなさい」
「許さない」
諦めたように真柴は肩で息をつき天井を眺めた。
──こんなΩになりたくなかったのに……。
キイチは上半身裸で風呂上がりの濡れた髪のまま、ものすごい勢いで大盛の豚丼を食べている。間に挟むサラダがチキン入りのシーザーサラダなので見ているだけで真柴は胸焼けしそうになった。真柴はサラダうどんを頼んだものの、半分くらいのところで気が済んでしまい、今は家にあった栄養ドリンクをチビチビ飲んでいた。
「後で俺コンビニ行ってくるよ」
ご飯粒を口の横につけながらキイチが告げた。
「えっ、まだ食べ足りないの?」
「違くて、真柴の食べれそうなもの買ってくる。ゼリーとかそういうのが楽でしょ?」
──こーいうところが本当に頭に来るんだよなぁ……。と真柴は心の中で独りごちた。
あっという間に完食したキイチはすぐさまコンビニへと走り、真柴のためにフルーツゼリーやレンジで食べられる野菜スープなどを色々見繕って戻ってきた。あまりに出来たラインナップを眺めて真柴はジトリとした目でキイチを見つめ「本当……腹の立つガキ」と一蹴した。
「こらー! そこは素直にありがとうでしょがー!」
真柴はありがとうの代わりに柔らかく微笑んでみせ、キイチはそれだけ満足そうだ──。
結局キイチは日曜の夕方まで真柴の家に入り浸った。日曜はさすがに無茶はして来なかったが、それでも恋人同士にでもなったみたいに真柴の身体に寄り添いずっとそばにいた。
──俺たちはたまたまお互いがαとΩだった。
ただそれだけの理由で身体を重ねたんだ──。
それ以上でも以下でもない──。
「このままじゃ俺はダメになる……俺がキイチと番になれるわけないのに──」
若い雄が欲しかったのは性欲を吐き出せるΩの身体であって、それは俺でなくてもよかったはずだ──。その証拠にどんなに理性を失ってもキイチは俺を噛まなかった──俺には抵抗する余裕すらなかったのに……。
最後にしよう──
でないと俺は俺を見失う──。
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