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痛いと言っているのに夫は嫉妬半ば、何度も真柴の腫れかけた胸の尖りを指で嬲っては甘噛んで、抵抗できないように真柴の太腿の間を割って、何度もその内側を撫でては器用に動く長い指を真柴の感じる場所まで進めていく。
「もっ、痛い……っ、やめてってば、キイチ……ッ、だめなのっ、本当にっ!」
「だって、大弥だけズルいよ、俺も舐めたい……」
「アホかっ、大弥はまだ歯がないんだから凶暴なお前と一緒にするなっ」
「──じゃあ、別のとこならいいの?」
「──へっ?」
真柴からの返事など待つこともせず、キイチは胸から臍まで舌を這わせて、太腿の内側を舐めて跡が残るまできつく吸った。
「こら、キイチ……っ」
「怒んないで、やだ──」
──何がヤダだ。ひ弱な年下ぶって、そのくせやることなすこと無茶苦茶なくせに、αの牙が隠れきっていない自覚だってちゃんとあるくせに、そうやっていつもいつも──。
「見えるところにしたら三食抜きっ」
「うん、大好き。真柴」
付き合って間もないカップルでもあるまいに、キイチからはずっと同じ熱量を感じて、悔しいけれど幸せで。真柴はいつだって泣きたくなる。
キイチに出会うまではこんなもの、何一つ信じていなかった──、恋とか愛とか、αからの誠実で一途な想いとか、そんなものは全てフィクションで──。
Ωで生まれた以上、大人になったら更に苦しいことの連続なんだと勝手に未来を悲観して、社会にしがみつくことでどうにか自分の存在価値を守ろうとしていた。
「ありがとう、キイチ……俺も大好きだよ」
──意地っ張りでなかなか素直に愛してるとも言わないひねくれたΩだけど──いつだってキイチは優しく待っていてくれる。
真柴が言わない分、自分が代わりにたくさん言ってあげようとするのがキイチの強さで優しさだ──。
──あの夜、あの雨の夜──俺を見つけてくれてありがとう。
素直になれない自分のことをいつも待っていてくれてありがとう。
──俺に大弥をくれてありがとう。
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