1995年11月

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 社会現象にもなっているアニメだから、毎週観ているとバラしてもオタク扱いされることはないはずだ。ビデオデッキを持っていない人間は、放映に間に合わなければ一話分を見逃してしまう。それは飲み会の誘いを断る立派な理由になると、江奈は思う。 「相変わらず、超高速な人差し指」  体はテレビに向けながら、プッシュボタンを連打する姿を横目で見ていたシエルが、笑った。  江奈は高校生のときにアルバイト代でポケベルを買ってから、4年も使い続けているのだ。打った数字がどう変換されるかは、完全に頭に入っている。 「年季が違うのよ、年季が」  そう答えたところで、アニメのオープニングが始まった。江奈はシエルの斜向かいに腰を下ろし、暖かいこたつに足を入れた。  親戚でもない男子とワンルームでこたつに入っている姿は、なかなか非現実的(シュール)だ。まるで漫画みたい。江奈はこっそりシエルの横顔を盗み見た。  まだ幼さが残るけれど、結構整ったしょうゆ顔だ。CMに入り、江奈には退屈でしかないブラウン管を、シエルは目を輝かせて観ている。彼の住んでいる地方とは、テレビコマーシャルの種類が違うのかもしれない。  詳しい事情は知らない。けれどシエルはどうやら、かなり田舎から単身上京してきたらしいのだ。
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