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1995年11月
イマト゛コニイマスカ?
振動したポケベルには、黒いデジタル文字でそう表示されていた。
428ノミイキマス?KO
次のメッセージのイニシャルで、送り主がわかる。サークルの後輩、緒形カツユキだ。最大12文字という制限の中でも、敬語を省略しない真面目さが彼らしい。
渋谷で飲み会か。行きたいけれど、水曜日はどうしても、6時半には家にいないといけないんだよな。
江奈はちらりと腕時計を確認し、家路を急いだ。駅に戻って公衆電話を使うことも考えたが、返事は部屋の電話からすればいいだろう。
アパートに帰り着き、鍵をひねってドアを開ける。すると部屋の中から、若い男の声が江奈を迎えた。
「おかえり、あと3分で始まるよ」
「ぎりちょんセーフ! シエル君、もうテレビつけといて」
「りょーかい」
江奈はコートを脱ぎながら、棚の上に置いている電話機の受話器を取った。カツユキのポケベル番号は暗記している。回線が繋がるのを待ち、人差し指で♯と数字を打ち込んでいく。
EVAアルカラ ハ゜スE
こちらで確認はできないが、カツユキのポケベルにはそう表示されているだろう。
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