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鈴の音やいままさに春の空となる
故郷や砂利道つづく金鳳花
酔っ払ひ夜道に零す麦酒かな
バス停の紅梅少女は天使待つ
まはらない回転木馬ふゆゆうやけ
犬抱いて散歩する人さくら艸
はばたきはこころのなかにふゆかもめ
いっぽんの花の如くに欅かな
雪化粧するいっぽんの欅かな
雪化粧していっぽんの欅かな
ドアをあけ夢に見たのはあの菫
ワンピースの裾濡らしける磯遊び
こんじきのかぜふきわたる秋一日
さざんくわややや桃色の日溜まりに
山茶花の白鮮やかに咲きにけり
芋の葉やゆれてうつくし芋の葉や
金木犀花簪の日本髪
あかあかや山あかあかや九月かな
あをあをと山あをあをと五月かな
花火四方八方華厳絵巻かな
大地金色銀杏落葉浄土かな
秋寒やさてオールドを開高健
秋晴れや筒井康隆わはははは
あかあかと山あかあかと九月かな
虚子が来て黄色き色の 朱欒 椀ぐ
雪降るや凱旋門より白馬 出発つ
折り畳み傘が雪に染まりて雷門
おうおうと羽根振るひつつ鷲降りる
雄孔雀の羽根の如くに檸檬切る
沈思する翳の濃かりき河童の忌
水溜まり夕日が映り太宰の忌
太宰忌のゆふぐれに投ぐ小石かな
すき焼きや下着姿の娼婦たち
イヌフグリみつはしちかこの愛の詩
消火栓破れたジーンズ尾崎の忌
蛇口より水の涸れたる あい.らぶ.ゆう
吸殻と夜の毛布と尾崎の恋
ニューヨーク.ドラッグ.尾崎に寒波来る
ステージより飛び降り崩れ夏至の羽根
酸欠や夏のベッドにイルカ這ふ
尾崎居たドーナツ.ショップに冬の色
凍り憑く月下や踊れ Y.OZAKI
自販機の15の夜に流星群
ギター十字架の如し尾崎の忌
死の際に翼ひろげて OZAKI 逝く
白シャツに十字架を切るアンコール
墓洗ふことなく星となりにけり
尾崎着く新宿ルイード息白し
青春は遠く過ぎたる青嶺かな
きさらぎの夜の神田の書店街
春雷やもっと激しく生きろよと
窓開き月の目映き橇来たる
赤鬼の粕汁持って躍りけり
片思ひひとり海ゆくゆふやけぐも
少年が薄をふって夕べかぜ吹く
ルシフェルの雪狂院の患者等に
日の落ちるきはのあの時空の秋
シャボン玉吹く曼荼羅華曼荼羅華
ウイスキーオンザロックの朧かな
枯れ枝の模様の空や光満つ
梅雨明けの水のさざめき詩仙堂
夏怒涛鍵盤と話すG.グールド
麦の黒穂狂気をさまり包帯巻く
ギムレットマーロウ晩夏の声を出す
葉の踊るポプラに灯る星幾つ
風渡りけり泳ぎけり花圃の上空
おほいなる乳房臀部や泳ぎ来る
虫の闇俳句綴りて麦酒飲る
太陽の羽根少年の日の夏の海
一遍忌南無阿弥陀仏阿弥陀仏
すこやかに晴れてあをくて夏天かな
道草をしているんだよ澄雄の忌
さるすべり浮かび夜空の与謝郡
蓮食うて独酌の夜や茶碗酒
浅草寺丸き柱や秋夕べ
満月のあをき夜空に掛かりけり
青とんぼパイプを磨く開高健
扇置くまへに鳴らして置きにけり
子雀の透ける夕日の駐輪場
綾瀬川霧ただよはせ流れけり
虚子が来て黄色き色のざぼん捥ぐ
流れ来て春の花咲く綾瀬川
太宰忌や孤児院とほく鐘が鳴って
青月夜娼婦の肌を撫でにけり
胸中に木枯らし吹くや渋谷駅
綿虫やバランタインを傾けて
桜咲く今宵ばかりと思ひ寝にさざめきわたる声に寝返る
純粋に美しき青牡丹雪月あらはれて白く澄みゆく
父が呼び母呼び子が去るその後の回転木馬に寒さ憑くなり
語らひて花見の帰り狂ひたる女が踊る吾妻橋見ゆ
枝の鳴る木枯らし吹けば父のこと
空也忌の月行くごとく舟を出す
雲映る水に流れて花椿
絵筆咥へゴッホが泳ぐ冬の海
名を成してそれは死後だとするならば馬鈴薯を食ぶゴッホに雪降る
我が胸に八月の風入れるなり海青くして雲白ければ
大根煮るふつふつ久保田万太郎
冬野道電柱の根に新聞舞ふ
雪狐雪みだしつつ奔りけり
早朝やあをき山かげ鳥帰る
いちめんの雪降り白き針葉樹
火炎佛不動明王年逝かす
霊柩車木の葉吹雪の夜となりぬ
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