7人が本棚に入れています
本棚に追加
4話
次の日、母は朝からずっと落ち着かなかった。
食事に集中できず自ら放棄したくせに、後になって「マリナがご飯を食べさせてくれない」と大声で癇癪を起こされ、もううんざりだ。
救世主にお願いする他ない。
私はやっと静かになった母を横目に、ようやく昼食にありつけた。
アサリの味噌汁をすする。
完璧に砂抜きがされているのに、何か物足りない。
そろそろだろう。
味噌汁を飲み干した時、インターホンが鳴った。
予定していた来客を感知した玄関のドアが自動で開き、訪問者がリビングに顔を見せる。
母が笑顔で駆け寄って行った。
「アキちゃん、なかなか来ないから心配したのよ。どこに行っていたのよ」
「ごめんなさい。大事なものを取りに帰っていたら、時間がかかってしまったみたいです」
そう言ったアキの首には、どこかで見た貝殻のネックレスが下げられていた。
この家政婦は、どうやら物事を円滑に進めるためのウソを覚えてきたらしい。
最初のコメントを投稿しよう!