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僕と朝霧君は幼なじみだ。いわゆるお隣さんで同い年。当然、両家の親がこのメリットを逃すはずがなく、公園デビューから小学校の登下校から、何から何まで一緒くたにされていた。覚えている最も古い記憶にすら朝霧君はいた。そしてその頃から、彼は僕をいじめていた。だから僕にとっては、朝霧君に逆らわないという事は刷り込みだとか、条件反射のような単純なものではないのだ。
そう、もっと単純。真理なのだ。なにがあっても正しいこの(僕の)世の真理なのだ。
だから、明らかに胡散臭い笑顔で自宅に招き入れようとする彼の誘いにも、これまた引きつった笑顔で応じなければならないのだ。
****・****・****・****
「え?…一人暮らし?」
てっきりお隣さんへと招かれると思い込んでいた僕は、自宅から2駅も離れた小さなアパートの前で呆然と立ち竦んだ。
「おぅ。大学出てから一人暮らし始めたんだよ」
聞いてない。聞いてないですよ朝霧君。つか朝霧の叔父さん叔母さんはこんな野獣のような男を野放しにするつもりですか。地球、いや宇宙、いや全宇宙のいじめられっ子への挑戦ですか。いいでしょう、受けてたちます。勝てる気は全くしないけどね。
「早く入れよ」
「ふぁはい!!!」
ははは無理無理。
僕は転ぶように室内へ入っていった。
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