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尾行の先
男たちを尾行していると見えてきたのは、下水を浄化する魔方陣が張られた建物であった。
「ここを使っているのか......? 」
男たちを見失わないよう、こっそりとあとをつけていった。
進んだ先には、信じられない光景が広がっていた。
「オラッ! さっさと働けッ! 」
奴隷のように労働をさせられている人々。その全てが異種族。非人道的なその行為は、グァロンの怒りを引き立たせるに十分であった。
「やめろぉおおおおおおおッッ!!! 」
その空間にいた全ての人物が、グァロンの方を向いた。その中には、肉屋に来ていたマントの男もいた。
「あの男、つけてきていたのか」
「これ以上奴隷のような生活をさせるんじゃない! 彼らだって、人間と同じ尊い命だ! 大切な命だ! そんな命を踏みにじるみたいに働かせて、お前たちそれでも人間か!! 」
グァロンが雄叫びをあげると、人間化が解除され、ドラゴンと人間のハーフ。リザードマンのような見た目の美しい竜人が現れた。羽衣のように薄く綺麗な翼を使い、グァロンはマントの男たちに突撃した。
「うわぁああ! やめろ化け物め! 」
「殺さないでくれ!! 」
鋭い爪と尖った牙は、男たちの肉を裂き、死に至らしめた。白銀の鱗が血に染まるほど。
「はあ......はあ......」
グァロンは人間化を張り直し、異種族の彼らに言った。
「あなたたちはもう、自由です! 」
それを聞いた瞬間、人々は歓喜し、グァロンに感謝をした。次々にその浄水場から人々が出ていく。グァロンだけはそこに残り、あのマントの男の元へ歩いていった。
「大丈夫ですか? 」
頭を支えて自身の膝にのせ、男に話しかけた。
「うう......」
「ドラゴンを知ってるんですか? 教えてくれれば、助ける道理ができます」
「はあ......はあ......内臓がやられている。どのみちもう助からん。教えてやる」
ついに母親の糸口を掴める。今どこで何をしているのか。安定した生活をできているのか。グァロンはそんな幸せな期待をしていた。
「あの日、俺たちはドラゴンを探していた。必要だったのだ。そして、あの白銀の鱗のドラゴン。やつは」
そこまでいった瞬間、男の額に撃たれた傷ができた。浄水場の入り口を見てみると、誰かがこちらに銃のようなものを向けてきているのが見えた。
「はっ!! おい!! 」
男は既に死んでいた。母親の手がかりはなくなったが、男のマントにはバッジがついていた。
「これは......? 」
これがたった一つの、母親という目的にたどり着くための筋道、唯一の希望なのである。
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