僕は何も決められない

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 死んだ。  やけにあっさりと死んだので、まだ実感はあまり無いが、どうやら僕は死んだらしい。  食中毒だったようだ。  自宅で夕飯を食べた後、突然、頭と内臓が回りだし、そのまま僕は意識を失った。病院へ搬送されたらしく、死の間際に一瞬だけ意識が戻った際、傍らで(うずくま)る妻と息子がそんな話をしていたことだけは覚えている。  その後、再び意識は途絶え、次に気が付いた時には僕の意識は自分の身体(からだ)を見下ろしていた。病床の横の心電図の推移は真っ直ぐ真横に進んでいたので、なんとなく自分の死は察する。  死後に意識が残るなんて思ってはいなかったけど、実際に自分の意識が宙を舞っている以上、疑うことはできない。無にならなかったことには安堵するが、この後自分がどうなるのかはよくわからないので、落ち着かない気分になる。  少しだけ惚けていると、徐々に自分の意識体が上昇していることに気が付いた。  これが天に召されるということだろう。僕は僕の身体にすがり付き泣いている妻と息子にお別れの挨拶をこっそりと告げ、そのまま身を任せた。  僕は死んでしまったが、同じ食卓を囲んだ妻と息子が無事なのであれば、それはとても幸運なことなのだと思う。
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